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アーユルヴェーダから見た食事について
アーユルヴェーダでは、健康に良いとされるものでも万人に良いわけではないと考えられています。季節や時間、体質や体調など、日々の生活の中で起こる、さまざまな変化。その変化を感じ取り、“今の自分に合う食事”を取ることで、本来の自分らしく快適に過ごすことができるはず。ここでは、アーユルヴェーダからみた食事について解説していきます。食事への意識を高め、是非あなたの生活にも役立ててください。
アーユルヴェーダと食事の考え方
アーユルヴェーダでは、健康的な食事を取るために大切な3つの考えがあります。まず始めに、アーユルヴェーダと食事の考え方を紹介します。
■食事を取るときに大切な3つのこと
①アグニ(消化の火)を高める
②アーマ(未消化物)を抑える
③マラ(老廃物)の生成を高める
アーユルヴェーダでは、この3つの考えを大切にしています。①アグニは、「消化の火」と言われ、食べたものを消化する力のことを言います。そうすることで、②アーマである「未消化物」が体内に蓄積されないようになります。そして、不要なものは③マラと呼ばれる「老廃物」となり、汗・尿・便として、身体の外へと排出されるのです。
■6つのラサをバランスよく取ろう
アーユルヴェーダには、一回の食事の際に6つのラサを取り入れることが良いとされています。6つのラサについてみていきましょう。
①甘
甘味は重性、油性、冷性の性質があります。身体にエネルギーと活力を与えてくれる働きがあります。
食材:米、小麦、牛乳、砂糖など
②酸
酸味は熱性・湿性・重性・粘稠性(粘り気がある)の特徴があり、食欲を増し、消化を促進し、身体を温める働きがあります。
食材:酢、梅干し、チーズ、ヨーグルトなど
③塩
塩味は温性、重性の性質を持ちます。少量の摂取はエネルギーを与え、成長を促し、体内の水分を適切に保持します。
食材:漬物、醤油、塩、昆布など
④辛
辛味が持つ性質は、熱性、軽性、乾燥性。消化と循環を促し、脂肪を体外へ排出します。
食材:生姜、コショウ、唐辛子、スパイスなど
⑤苦
苦味は冷性、軽性、乾燥性が挙げられます。
食材:黄色野菜、ほうれん草、ニガウリなど
⑥渋
渋味は冷性、乾燥性、重性です。
食材:豆類、渋柿、緑茶など
食材とドーシャの関係
次に紹介するのは、食材とドーシャの関係性です。アーユルヴェーダでは、五元素理論が存在し、全てのものには「空・風・火・水・地」の5つのエネルギーがあると考えます。そして、これらを空・風=ヴァータ、火・水=ピッタ、水・地=カパ に分けます。
ここでは、いくつかの食材とドーシャの関係をみていきます。
■野菜
・きゅうり
「冷」の性質を持つ。ピッタ が高まっている時など、身体が熱っている時などにオススメ。
・じゃがいも
「乾」の性質を持つ。油性の性質を持つカパが高まっている時にオススメ。
・かぼちゃ
「温」の性質を持つ。身体に冷えを感じる時にオススメ。
■果物
・りんご
ピッタとカパを減らす。スパイスなどと合わせるとヴァータの増に役立つ。
・バナナ
ピッタとカパを緩和させ、ヴァータを増やす。
・いちご
ヴァータとカパを鎮静させ、ピッタを活性。
■オイル
・ごま油
ヴァータを鎮め、ピッタとカパを活性。
・オリーブオイル
ヴァータ、ピッタを緩和させ、ピッタを増やす。
・スイートアーモンドオイル
ヴァータとカパを減らし、ピッタを増やす。
今の私に合う食事とは?(ドーシャに合わせた食事)
■ヴァータに合う食事
セカセカとした毎日で「速」や「乾」のエネルギーが高まると、ヴァータが増えます。肌が乾燥したり、心がソワソワするなと感じた時は、ヴァータの性質を抑えるか、逆の性質を取り入れることがオススメ。ヴァータの方に特に合う調理法はスープです。じっくり時間をかけ調理されるものは特にオススメです。
■ピッタに合う食事
「最近イライラするな」と感じる時は、ピッタの性質である「熱」「鋭」のエネルギーが過剰になっているかもしれません。そんな時は、ピッタ が持つ性質と真逆のものを摂るように心がけましょう。特にオススメなのは、きゅうりやミント、ココナッツバターなどです。これらは、熱を持った身体を内側から和らげてくれるでしょう。
■カパに合う食事
脂っこいものを摂り過ぎると「重」「冷」などのカパの性質が高まります。その結果、身体が冷えやすくなってしまうかもしれません。カパの性質を鎮静させるためには、炒めたり、温めたりした食事を摂ること。また、生姜を加えることで冷えの解消に役立つでしょう。
シーン別!アーユルヴェーダから考える食事の取り方
■朝食〜朝が苦手なあなたへ〜
朝、なかなか身体がスッキリしないと感じる場合は、「地」や「水」の要素であるカパが多くなっているのかも。起きたら、白湯を一杯飲み、休んでいた身体を目覚めさせましょう。また、脂っこいもの、乳製品、身体を冷やす食事は控え、温野菜や温かいスープなど、身体を芯からポカポカにしてくれる食事を心がけることも大切。きっと、心までポカポカ温まるでしょう。
■昼食(ランチ)〜仕事の疲れを解消したいあなたへ〜
バタバタと仕事に追われ、「ちょっと疲れを感じるな」という時は、ヴァータの特徴である「空」や「風」の要素が高まっているかもしれません。そんな時は、ヴァータを増やしにくい食事をしましょう。苦味のあるコーヒーやシリアル、ドライフルーツなど乾燥するものは、ヴァータを増加させてしまいます。肉や適量のナッツなどがオススメ。また、歩きながら食べたり、慌ただしく食事をするのは避け、きっちりと食事の時間を確保するようにしましょう。
■夕食〜今日の疲れを癒やしたいあなたへ〜
一日がんばった自分自身を労るために、夕食にもこだわってみるのもいいかもしれません。いつもより時間をかけ丁寧に作ったスープと肉料理。食後にはフレッシュなデザートを。身体の内側の乾燥を潤してくれるオイルはヴァータの働きを鎮めてくれます。また、温かいスープは、カパの特徴であるだるさや冷えを緩和させます。新鮮な果物はピッタを鎮めてくれるでしょう。身体の状態を観察し、今の自分に必要な食事を摂るよう、心がけてみましょう。
今回は、アーユルヴェーダから見た、「食」について紹介しました。私は、数年前まで食事に対するこだわりを持っていませんでしたが、あることがきっかけで、「食」に対する考えが変わりました。「今の私」に合う食事は、自分の身体が一番よく知っているのだと気づいたのです。日々の生活の中でさまざまなことが起きますが、その出来事と同時に変化する心や身体の状態をしっかりキャッチし、その時の自分にピッタリの食事が摂れるようになることが大切だなと思います。この記事を読んでくださった“あなたの毎日”が、より豊かになることを願っています。
オガライフライター 伊藤 利枝さん のプロフィール