陰陽の調和をはかる動的なヨガと静的なヨガ
一般的に知られている身体を動かすヨガを指す「ハタ・ヨガ(ハタ・ヨーガ)」には、大きく分けて2つのスタイルがあります。多くのポーズをおこない意識的に筋肉を働かせる「動的なヨガ(陽)」と、筋肉を休ませ休息や回復力を養う動きの少ない「静的なヨガ(陰)」です。今回ご紹介する陰ヨガは、2つの補い合うエネルギー「陰陽」によって万物が調和を保つという陰陽理論や伝統中医学を基にした静的なヨガです。
陰ヨガの3つのステップ
陰ヨガは、1つのポーズを1~5分程の時間をかけ、心地の良いストレッチを味わいながらツボ(経穴)を通る「経絡」という氣の通り道に刺激を与えます。氣血の巡りを促し、内臓機能の向上、心身のリラックスとともに、関節(結合組織)の柔軟性を高めることを大切にしたヨガです。
陰ヨガでは、
- ポーズの形にこだわらず心地よい伸びを感じることができる位置を探す。
- 静止し、チカラを抜いてゆだねる。
- ポーズの後、余韻を味わう。
この3つのステップを大切に、個人が持つ骨格の個性に合わせ、表面的なポーズの出来不出来にとらわれることなく、ご自分の心と身体に寄り添うように無理をせずおこなってみてください。
おうちでできる陰ヨガポーズ!リラックス&デトックス編
今回ご紹介する陰ヨガポーズは、消化・吸収能力を高め、ストレスによるイライラや怒りなどを和らげる肝と対になる「胆経」と、悲しみの感情や呼吸の働きを司る「肺経」をターゲットにしています。安心してゆだねることができるようにタイマーとブランケットをご用意ください。
①タイマーを1分~5分にセットします。(初めての方は1分から始め、徐々に時間を増やしてください。)仰向けになり両膝を立て、右脚を左脚の上にかけ足を組みます。
②吐きながら組んだ両脚を左へ倒します。
このポーズでは、右ヒップ側面~ウエスト~右体側~右肩全面~右腕にかけてのターゲットエリアにじんわりと心地良い感覚があるか、右腕や骨盤の位置などを微調整します。穏やかな呼吸を感じる方向へ顔を向け、全身のチカラを抜きます。(身体が冷える場合はブランケットをかけてください。)
ポーズを自ら深めようとせずに、刺激を感じるエリアに意識を向け、ただ重力に身を任せましょう。(ストレスなどでこわばった身体が次第に緩みはじめるのを待ち、チカラが抜けないときは、口からため息をつくように大きく吐き出しましょう。)
*肩や腰などに違和感、痛みを感じたら無理をせずにポーズを中止してください。
③タイマーが鳴ったら、ゆっくりとご自分のペースで元に戻ります。
④反対側も同様にタイマーを1分~5分にセットし、左脚を右脚の上にかけて足を組み、右へ倒します。左ヒップ側面~ウエスト~左体側~左肩全面~左腕にかけてのターゲットエリアにじんわりと心地良い感覚があるか身体の位置を微調整し、タイマーが鳴るまで意識を身体に起こる感覚へ向け、吐く息とともにチカラを手放します。
⑤タイマーが鳴ったらゆっくりと元に戻り、両脚を伸ばし仰向けのままでポーズの余韻を味わいます。氣血の巡りを感じる大切な時間です。何も感じられなくてもゆったりとした気持ちで、身体の自然な作用に身を任せてみてください。
陰ヨガで留まる時間を気づきの時間へ
陰ヨガは敢えて動きを止め、「今、ここ」で起こっている身体の感覚に意識を置き、大地にゆだねます。留まる静寂の時間は、せわしなく動き続けることでは気づけなかった本当の心と身体の声に気づく時間ともなり得ます。現在私たちが直面している社会・経済活動が困難な「留まる」ことが要求される時期にも、きっと気づきがあります。この困難な日々にこそ陰ヨガを通じて、本当の心と身体の声に気づき、安らぎのお時間をお過ごしいただけたらうれしいです。Namaste.