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ヨガ ニドラってなに?
「ヨガ ニドラ」という言葉を聞いたことあるでしょうか。「ニドラ」はサンスクリット語で「寝る、眠る」という意味があり、「ヨガ ニドラ」は文字通り睡眠状態に近い意識状態で行う「ヨガ」です。ここでいう「ヨガ」は体を動かすヨガではなく、サンスクリット語のyuj(結合する、一体化する)を語源とする、「心と体とを結合する」という意味での「ヨガ」です。最初から最後までシャバーサナなどのくつろげる体勢で行い、「眠って」しまわず、眠りと覚醒の間のまどろみの状態で行うのが一番効果的とされています。
ヨガ ニドラの練習時間は10分程度の短いものから40分ほどの長いものまであります。インストラクターの声かけにより、深いリラックス状態に導かれます。体を動かす必要がないので、怪我や病気、高齢などで体が動かしにくい方や妊娠中の方、さらには子どもまで、誰もが気軽に実践できるリラックス方法と言えます。
ヨガ ニドラっていつからあるの?
ヨガ ニドラはいつ頃から練習されてきたかというと、少なくとも5世紀頃のインドの文献に言及されており、かなり古くから体を動かすヨガと共に練習されてきたようです。特にヒマラヤ地域の寺院で伝承されてきたようで、近代的には1970年代にスワミ・サッティヤナンダ氏が欧米にこの練習法を大きく広め、また2000年以降では、臨床心理学者のリチャード・ミラー博士がヨガ ニドラをベースに確立したiRestも欧米を中心に広まりました。日本でもここ10年ほどでヨガ ニドラを受けられるスタジオや、ヨガ ニドラ講師の養成講座も少しずつ増えており、最近はスポーツジムで受けられるところもあります。
ヨガ ニドラの効果
ヨガ ニドラにはどんな効果があるのかというと、ストレスや不安感の低減、集中力や判断力の向上、睡眠の質の向上、自律神経の調整が一般的に知られています。ある研究*1では思春期の子どもたちがヨガ ニドラを週3日1か月間続けたところ、幸福度や熱意、平穏さ、そして自己肯定感が向上したことが確認されたそうです。また別の米国の研究において血圧*2、さらには血糖値*3の低下といった効果も立証されています。
ヨガ ニドラって実際何をやるの?
一般的なヨガ ニドラの多くには、以下の要素が含まれます。
ボディスキャン
イメージング
サンカルパ(大願)
それぞれの要素をもう詳しく見ていきましょう。
「①ボディスキャン」は、体の各部分に意識を向けるリラックス法で、「右手の親指、人差し指、中指、、、」と言ったようにインストラクターが言う体の部分に意識を向けてきます。体のパーツに意識を向けるという単純な行為ですが、意識を向けた部位の緊張がほどけるような効果があります。ちなみに「ボディスキャン瞑想」という単独の瞑想法もあるほどですす。
次に、「②イメージング」では頭の中で画像を思い描きいていきます。ひとつのイメージを描いてそれに集中する方法もありますし、砂漠や雪山、摩天楼やビーチなど様々な情景を次々と想像していく方法もあります。何かをイメージングすることで、意識を内側に向け、潜在意識や直感といった部分にアクセスしていきます。
そしてヨガ ニドラの練習では大概、最初と最後、または最後だけに「③サンカルパ」という大願を唱えます。サンカルパは、真の自分が「こうなりたいと思う姿」や「こうしたいと思うこと」で、それを3回唱えることで自分に浸透させていく効果があります。またサンカルパは、ヨガ ニドラでリラックス状態に入ったときにふと思い浮かぶこともあります。
上記に紹介した以外にも、「暖かい、涼しい、嬉しい、悲しい」といった感覚や感情を想像させるような声かけや、リラックス状態で静かに呼吸を繰り返す時間などが、ヨガ ニドラの構成要素としてよく含まれます。どれも少しずつ自分の内側に入っていくような効果があります。
ヨガ ニドラを受けた後はどんな気分?
個人差はありますが、ヨガ ニドラを受けた直後は少しぼーっとすることが多いようです。30分程たつとそれが爽快感やリラックス感、やすらかさ、そして安心感に変わっていくと多くの人が言います。
ヨガ ニドラはどこで試せるの?
近年ヨガ ニドラを受けられるスタジオは首都圏を初め全国で増加傾向にあります。また常設クラスではなく単発のイベントで行っているヨガインストラクターやセラピストの方も多いようです。近くで受けられるクラスがないか一度検索してみましょう。またYouTubeでも自宅や通勤中に聞けるヨガ ニドラの投稿を見つけることができます。無料アカウントのYouTubeだと途中でCMが入ってしまう可能性がありますが、まずどんなものか試してみたいという方はYouTubeで聞いてみるのもひとつの方法です。ただ対面クラスの方が、部屋の温度や照度などを講師に快適に調整してもらえることも多く、じっくりヨガ ニドラの状態に浸れる可能性が高いように思えます。
これからの社会で役立つリラックス方法:ヨガ ニドラ
手軽で実践しやすく、様々な効果が期待されるヨガ ニドラ。新型コロナの脅威が収まってきたとは言え、日本人のストレス度は先進国のなかでトップレベルを維持しています。また電子機器の多用で自律神経が乱れる人も近年増えています。15分程度から気軽に行えるヨガ ニドラは、日々多くのストレスにされされる私たちにとても有効なリラックス方法です。一度ぜひお試しください。
本記事の参考文献である『Radiant Rest』を日本で翻訳出版するためのクラウドファンディングが現在実施中です。日本でヨガ ニドラに詳細に書かれた本はまだなく、この本が日本で出版されればリラックスを必要とする多くの人の役に立つことでしょう。
ご支援に興味がある方はこちらから
参考にした研究結果
*1: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30233120/
*2: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35003295/
*3: https://ijpp.com/IJPP%20archives/2009_53_1_Jan%20-%20Mar/97-101.pdf
参考文献
『Radiant Rest: Yoga Nidra for Deep Relaxation & Awakened Clarity』
オガライフライター Kannaさん のプロフィール