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南米ウルグアイ ホセ・ムヒカ前大統領とは?
2016年に来日し、「世界でもっとも貧しい大統領」として話題になった南米・ウルグアイの大統領をご存知の方も多いと思います。
彼が一躍、時の人となり知れ渡ったのは2012年、国連主催のブラジルで行われた環境会議でのスピーチ。
小さな南米・ウルグアイ大統領のスピーチに耳を傾ける人は少なく、当時席に残っていた各国の首脳らはごく僅かだったといいます。
しかしその後、彼の「もっとも衝撃的なスピーチ」は瞬く間に広まり、「世界でもっとも貧しい大統領」として知れ渡りました。
ミニマリスト(最小限のものだけで暮らす人)というライフスタイルをする人が広がりつつある今、消費社会に生きる現代人として、あらためてホセ・ムヒカ前大統領の言葉の数々から”豊かさの本質”の考え方を学んでいきたいと思います。
世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉 単行本 佐藤 美由紀 (著)
大統領らしからぬ、質素な生活
国民から愛され、愛称「ペペ」と呼ばれるムヒカ前大統領は、給与の9割は慈善事業に寄付し、国民の平均月収と同じ約1,000ドルで生活をしています。
水道は通っておらず、井戸から汲む。大統領官邸ではなく、畑の脇の小さな平屋に妻と二人で平家に住み、自ら畑も耕す。
車も新車ではなく、1987年製のフォルクスワーゲン・ビートルに乗り続ける。そんな質素な暮らしを、一国の最高権力者になっても続けていました。
このような生活をムヒカ前大統領は「私は持っているもので贅沢に暮らすことができます」と言います。
嘘のない、心からの言葉に、ウルグアイ国民は親近感と信頼を抱いていたでしょう。
「貧しい人というのは少ししかモノを持っていない人ではなく、もっともっといくらあっても満足しない人だ。」
ブラジルでの環境会議で、ムヒカ前大統領はこうスピーチしました。
「西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界の70憶~80憶の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球にあるでしょうか。可能ですか。」
「人がもっと働くため、もっと売るために使い捨ての社会を続けなければならないのです。悪循環の中にいることにお気づきでしょうか」
「石器時代に戻れと言っているのではありません。マーケットをまたコントロールしなければいけないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。」
これらはムヒカ前大統領のスピーチのほんの一部の引用ですが、我々の目の前にある巨大な危機問題は環境危機ではなく、政治的な危機問題だと本質を突いたのです。
私たちも日々、電車に乗れば広告が目に入り、インターネットを開けばまた広告。テレビを付ければ新商品のコマーシャルが流れている。
消費社会だなあとつくづく感じますし、実際わたしはそういった広告を見ると、最新のものに追いつかなければいけないような気がして、疲れてしまうことがあります。
これがもしかしたらムヒカ前大統領の言う、「人類がこの消費社会にコントロールされている」という状態なのかもしれません。
私はテレビを持っていません。数年前に壊れてしまい、そのまま新しいものを購入しなかったのですが、今はテレビがなくても困りません。
最低限の必要な情報はスマホやパソコンで得られますし、だらだらとテレビをみて時間を過ごすということもなくなり、読書など他に好きなことに時間を使えます。
「買って買って買って、ローンを払うためにもっと働き、一生を費やす。幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいますよ。」
とムヒカ前大統領は警告を鳴らします。
見直すべきは考え方。本当の豊かさ、幸せとは
大事なのは最低限のもので生活できるようになるということ。なぜか?やりたいことに費やせる時間を確保するため。それが自由ということ。
現代はモノで溢れ、日本も物質的にはとても豊かになりました。文明として発展してきたことは事実です。
しかし、やりたいことに費やす時間・会いたい人に会う時間など”自由な時間”は結果的に減ってしまったのではないでしょうか?
「発展が人生の邪魔をしてはならない。発展は人類の幸せ、愛、子育て、友達を持つこと、そして必要最低限のもので満足するためにあるべきものなんです。なぜならそれが一番大切な宝物だからです。」
確かに、持っているものが少なかったら、それらをメンテナンスする時間もその分減りますよね。
例えば、スマートフォンが普及する前は、携帯のバックアップを取ったり、アプリをアップデートする手間もありませんでした。
今は携帯をローンで買うことが当たり前の時代になり、便利になった反面、多くの時間とお金を携帯電話のために消費することになりました。
古くて新しい、ミニマリストというライフスタイル
ミニマリストという言葉をよく耳にするようになりました。
モノを持たずに、ファッションも毎月レンタルできるようになったり、カーシェアリングも普及してきました。
ムヒカ前大統領は「物を持つことで人生を複雑にするより、好きなことができる自由な時間の方が大切です」と言います。
流行しているミニマリストというライフスタイルを表面的に捉えるだけではなく、いかに本質を捉えて、「モノを減らすことで生まれた自由な時間をどう有効に過ごすか」ということを一度本気で自分に問うことが大切かもしれません。
※文中太字の箇所、「世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀著より引用