「ローフード・ダイエット」という言葉を聞くことも珍しくなくなりましたが、 ローフードとは何なのか、そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

オーガニックな食事・食生活

本当に体にいいの? ローフード・ダイエットのメリットとデメリット

投稿日:2018年7月17日 更新日:

オガライフ特別ライター、水上生活翻訳者のリアキです。
オーガニックな商店が身近にある関係で、よく健康的なお菓子を求めて行くのですが、健康系の宣伝文句として「Organic」「Vegan」の次くらいによく目にする言葉が「Raw」です。「ローフード・ダイエット」という言葉を聞くことも珍しくなくなってきた今日この頃。ローフードとは何なのか、そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

 

ローフード・ダイエットとは

「ローフード・ダイエット」という言葉を聞くことも珍しくなくなりましたが、 ローフードとは何なのか、そのメリットとデメリットを考えてみましょう。

「Raw」とは、食品・食材のことなら「熱を通していない、生の」という意味です。「Raw foodism(ローフード主義)」は実は19世紀からある考え方です。
野菜、フルーツなら、生のまま食べたり、ジュースやスムージーにしたり、「40~49度以上の熱を加えない」低い加熱調理もローフードらしいです。
塩や麹に漬けたもの、生のままろ発酵させたもの、刺身、馬刺し、生卵なんかもローフードに含まれます。

「未加熱」=「生」=「生きている」ものに詰まっている生のエネルギーが、加熱すると失われるから生のまま食べよう、というコンセプトです。
「加熱調理した食べ物は毒だ!」と言い切る、純粋なローフード主義者もいるくらいです。ローフード料理研究家のSimone Samuels氏は、ローフードに切り替えたことでカフェインや砂糖中毒を断ち切ることができ、味覚も直感も研ぎ澄まされた、とローフード大絶賛です。

こういう情報を見ていると、自分も試したいな、とワクワクしてきます。デメリットなんてあるの?と思ってしまいますね。

本当に体にいいの? ローフード・ダイエットのメリットとデメリット

 

ローフードのメリット 1:痩せるって本当?

同じ量の野菜でも、生で食べるのと加熱調理したのでは、硬さと見た目の量が違います。加熱調理された場合に比べると、水分が失われていないので同じ量でも多く感じます。ニンジンの生スティックと、煮込んだニンジンでは歯ごたえが全く違うので、自然とたくさん噛んでから飲み込むことになります。つまりローフードは同じ加熱調理された食材に比べて無意識に噛む回数が増え、噛むことで脳から満腹だというシグナルが出てくるので食べ過ぎることがありません。
結果、食べる量つまり摂取カロリー自体が減る、ということです。

また、太る理由の一つである炭水化物、穀類・芋類は茹でたり炊いたりと加熱調理しないと食べられないので、ローフードになる→炭水化物の摂取量が減る→太る要素が減るという側面もあります。そういうわけで大抵の場合、ローフードに切り替えることで痩せるのはほぼ間違いないようです。これは体重を落としたい人にとっては大きなメリットです。

本当に体にいいの? ローフード・ダイエットのメリットとデメリット

 

ローフードのメリット 2:病気になりにくいって本当?

ローフードは加工・調理された食べ物に比べて消化が速く、腸内滞在時間が少ないそうです。タンパク質や脂質が腸内で腐敗すると、ガスや炎症が発生、有毒な廃棄物が蓄積し、便秘関連やリーキーガット症候群などの問題につながる一方、ローフードは腸内をスイスイ通り抜けるので大腸に負担をかけにくいということらしいです。確かに、生野菜やフルーツをたくさん食べると食物繊維の摂取が増えてお通じがよくなりますし、生搾りのリンゴジュースを使った断食もあります。胃腸への負担を軽減して休ませてあげるという意味で、一定期間ローフードを摂取するのは良さそうです。

ローフードに切り替えるくらい意識が高い人はさらに、自分で選んだオーガニック野菜やフルーツを、自分で加工処理して食べようとするのが自然です。
何を食べているかを完全に把握できるうえに、外食やテイクアウト・既成の加工食品にありがちな添加物の摂取量が減り、食生活がシンプル化するというメリットもあります。

 

ローフードのメリット 3:栄養価が高いって本当?

ローフード主義者の方が唱える主要なメリットとして、食物に含まれるビタミン・ミネラル・酵素が加熱調理で失われてしまう前に食べられることが挙げられます。Dr. Axeによると、ローフードには外因性の酵素が含まれていて、これが体内で作られる消化酵素を補助してくれます。Rawfoodlife.comのRobert Ross氏をはじめ、様々なソースでは、体にいいとされる酵素は一定の熱(47度以上のと言う人が多い)を加えると死滅してしまうと言っています。

Scientific Americanによると、生のニンジンに含まれるポリフェノールは加熱調理で完全に失われ、トマトのビタミンCは88度で10分加熱すると10%、30分間で29%失われますが、同じトマトに含まれる抗酸化物質リコピンの場合、88度で30分加熱すると、リコピンよりも吸収されやすいシスリコピンが35%も増えたとのこと。

さらに、ブロッコリーやカリフラワーを加熱することで、前がん状態の細胞の悪性化を防ぐインドールという物質が生成されるとも言っています。
ほうれん草には鉄分も、鉄分吸収を妨げるシュウ酸の両方含まれていますが、加熱でシュウ酸を分解できます。ニンジンに含まれるβ-カロテンや、生卵に含まれるタンパク質も加熱によって吸収効率が上がると言われています。卵白には卵黄に豊富にある、髪の健康に不可欠なビオチンの吸収を阻害するアビジンという物質が含まれますが、加熱することで不活性化されるそうです。

本当に体にいいの? ローフード・ダイエットのメリットとデメリットについてご紹介します。卵白には卵黄に豊富に含まれる髪の健康に不可欠なビオチンの吸収を阻害するアビジンという物質が含まれますが、加熱することで不活性化されるそうです。

つまり、加熱で失われる栄養素もあれば、逆に摂取しやすくなる栄養素もあり、単純に何でもかんでも生のままがいい、
加熱したほうがいい、というわけではなく、一概に「ローフード=栄養たくさん」とは結び付けられないようです。

 

ローフードのデメリット 1:食べられるのものが限定される

ローフードのデメリットの一つは、食べられるものがやや限られてしまうことです。熱加工していない漬物はごはんとよく合いますが、そもそも穀類・豆類・芋類は基本加熱調理しないと食べられません。ごはん、お漬物、お味噌汁、丼物・・・と日本食はを想像するとどの料理も、加熱調理と切っても切り離せません。日本食はローフードだけではほぼ、成立しないのです。

ローフード・ダイエットを始めると、サルモネラ菌などの食中毒が怖いのでローフードかつヴィーガンになりがちで、そうすると食べられるものがぐっと限定されてしまいます。好きなものを我慢しなければいけないというのはデメリットです。

 

ローフードのデメリット 2:栄養が偏る

ローフードを概ね良いものとして薦めているDr. Axeも、ローフード食のヴィーガンはやめたほうがいいと言っています。加熱して食べる動物性食品に多い、タンパク質、鉄分、亜鉛、葉酸、オメガ3脂肪酸、ビタミンD類、特にB12などのビタミンB類が不足するためです。また、加熱前の食べ物の多くはもともと天敵から身を守るための毒物を含む、とも指摘されています。生のままだとビタミンを破壊し、消化酵素の作用を阻害し、腸の壁を破壊する、と言うのです。

例えば生魚に含まれるチアミナーゼは脚気を防ぐビタミンB1(チアミン)を分解してしまうとのこと。先ほども出てきましたが、卵白に含まれるアビジンはビオチンの吸収を阻害します。このように、栄養が偏るおそれがあるというデメリットはやはり無視できません。ローフードに完全に切り替えることには慎重になったほうが良いでしょう。

 

ローフードのデメリット 3:冷える

ローフード・ダイエットの最大のデメリットは「冷える」ことだと私は考えています。生鮮食品に多く、加熱で出て行く水分は、体を冷やす「陰」な要素があり、熱を加えることで体を温める「陽」に傾きます。非加熱では体を温めてくれません。冒頭で「加熱調理した食べ物は毒だ!」と言った温暖なサンディエゴ在住のDavid Wolfe氏も、おそらく華氏で「体温が1.8度下がった」と自慢していますが、体温そのものは下がってもいいことはありません。人間が健康を保てる体温は36.5度だと言われていますが、現代人は子どもも大人も「冷え性」が問題になっています。体温が35.0度まで下がるとがん細胞が最も活発になるとも言われています。

ローフード・ダイエットの最大のデメリットは「冷える」ことだと私は考えています。

最初に紹介したSimone Samuels氏はインドネシアのジャカルタ在住。年間で気温が22度より下がることはない熱帯ですので、ローフードの体を冷やす効果が逆にメリットとなり、調子が良くなったのはある意味当たり前だと言えます。生野菜で作るスープ「ガスパチョ」は、焼ける日差しが照りつけるスペインの夏だからこそ美味しく、スイカやかき氷は蒸し暑い日本の夏だからスカッとするわけです。

私の住むイギリスは、日本でいうと北海道に近い気候です。夏らしい時期は数週間もありません。そのせいか代表的料理は、オーブンを使ったパイやロースト・ビーフなど、たくさんの熱を加えたものです。サラダでさえ、例えば私の勤め先の社食にあるサラダバー(写真)でもパスタやローストした野菜など、火を通したものが半分を占めています。

本当に体にいいの? ローフード・ダイエットのメリットとデメリット

我が家ナローボートが浮かぶ川や運河は街中よりさらに気温が1~2度低いので、私などがローフード主義者になったら、いつも寒い、不健康な人になってしまいます。

 

健康的なローフードの取り入れ方

ここまで色々なメリット・デメリットを論じてみると、ローフードが良いか悪いかという問題ではないとお気づきでしょう。その人に、その場所で、その時期に実践するのは適切かどうかは、もろもろの要素を考えずに決めることはできません。人の体や脳は元々、熱い時は冷たい・生のものを、寒い時は温かい、調理されたものを欲しがるように出来ています。ローフードが気になったら、まずは自分の体に相談してみましょう。毎朝体温を測って記録してみるのも一手です。

寒いと感じることが多い。手足がいつも冷えている。疲れやすい。痩せ気味で骨や筋肉が弱い、そういう人はローフードで「浄化」するよりも、体を温め、栄養をつける「滋養」が必要です。いつも暑がりな人、熱帯・亜熱帯に住んでいる人、気温に応じて暑いと感じる日なら、ローフードも良いかもしれません。でも、頑なに三食全部、熱を通さない食事にするような「生き方」としての食生活は、少なくとも春夏秋冬のある日本ではお薦めできません。

スムージー、サラダ、といった「ロー」な食品は、あくまでも嗜好品やおかずとして様々な調理方法をしたものと一緒に食べましょう。加工食品を買って温めるだけの食事をしがちな人が、生の素材から自分で調理すだけでも随分変わります。春や夏に、デトックスとして数日間とか期間を決めてやる、部分的な取り入れ方をする、といったやり方が日本人には無理がないのではないでしょうか。

ローフード、非ローフード、それぞれのメリットとデメリットをよく吟味したうえで、色々混ぜたり実験しながら、バランスよく、美味しく楽しく食べていきたいところです。

出典:

「Interview of David Wolfe, co-author of Nature's First Law: The Raw Food Diet」(英語)Living and Raw Foods
http://www.living-foods.com/articles/davidinterview.html

「7 Benefits I Never Expected When I Went On A Raw Foods Diet」(英語)Mindbodygreen
https://www.mindbodygreen.com/0-14628/7-benefits-i-never-expected-when-i-went-on-a-raw-foods-diet.html

「How Cooking Creates the Toxins in Food that Cause Disease!」(英語)Rawfoodlife
https://rawfoodlife.com/cooking-creates-toxins-that-causes-disease/

「Raw Food Diet: Benefits, Risks and How to Do It」(英語)Dr. Axe
https://draxe.com/raw-food-diet/

「Reality Check: 5 Risks of a Raw Vegan Diet」(英語)Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/reality-check-5-risks-of/

「Fact or Fiction: Raw Veggies are Healthier than Cooked Ones」(英語)Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/raw-veggies-are-healthier/


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オガライフWriterのRiaki Poništさんのプロフィール写真

Riaki Poništさん

食を中心にゆるいオーガニック生活を営む健康オタク。 旅で出会ったスロバキア人の彼と結婚してオクスフォードに移住し、現在は電気・水道・ガス・ブロードバンドの通っていない ボートで水上をさまよう暮らしに挑戦中。 実務翻訳のほか、音楽やブランドのプロモーションビデオ、ドキュメンタリー、YouTube Redシリーズ、NHK番組などの字幕翻訳を担当。 辞書で有名なオクスフォード大学の出版局で働く傍らTED翻訳にハマり、字幕の品質を管理するランゲージコーディネーターを日本語と英語の2言語で兼任。 2018年3月時点で270本を超える字幕にクレジットされ、食、健康、医療、サステナビリティ、社会問題など幅広い分野で積極的に文字起こし・翻訳している。

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