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体操のみではない、ヨガの哲学
ヨガ、と聞くと多くの方が思い浮かべるのが、様々な恰好をして体を動かしていく体操のような側面かと思います。
私は地元横浜でヨガ指導を4年行っておりますが、毎回レッスン冒頭でヨガ哲学の小話をしています。体操のみではない部分、ヨガ哲学についてもっと知っていただけたら、きっと皆さまのヨガが倍楽しくなると信じています。
ヨガ哲学についての経典
ヨガの歴史は古く、一説では4000年の歴史があると言われています。
ただ、当時のヨガは瞑想主体で、現代のヨガ教室で行うような体を動かしていくスタイルではありません。当時のヨガとは、蓮華座を組んで目を閉じ、宇宙と一体となる、いわゆる「解脱」を目的とした自己を探求する修行のことでした。
瞑想を深めようとする中で、体を動かすハタヨーガという種類の、私たちの知っているヨガが確立されてきました。
それだけ昔から現代へ伝わってきたヨガですが、その教えはもともと一子相伝であり、師匠(グル)が弟子に直接教授するというスタイルでした。それでは、現代の私たちが伝統的なヨガの哲学をどのように知ることができるのか?
ヨガについての2000年前の教えをそのまま知ることができる手段の一つは、代表的なヨーガの根本経典パタンジャリの「ヨーガスートラ」を読むことです。
基本のヨガ哲学、ヨーガの八支則
ヨガにも複数種類がありますが、ヨーガスートラはラージャヨガの経典として知られています。
古代、賢者パタンジャリが弟子たちに説いた内容を、その弟子たちが書き留めたもの、それが後にスートラと呼ばれるようになったそうです。ヨガを深め、いかに解脱に至るか、その為にどうしたら良いか、などが語られています。
その中でも、今回は代表的な教えが、ヨーガの八支則です。
ヨガにおける解脱、悟りを開く、という段階を「サマーディ」と言います。そこに到達するためには、8つの階段がある、という風に考えられています。今回は1段階目、2段階目について説明します。
第一段階 ヤマ (日常生活を送る上で、すべきでないこと。禁戒。)
・アヒンサー(非暴力) 他を傷つけないこと。
暴力的な思い、言葉、行動を慎みます。他者を傷つけることは、自分自身を傷つけることです。
・サティヤ(正直) 偽りを為さない、語らないこと。常に正直であれば、話す事柄が事実になります。
・アスティヤ(不盗) 他の物を盗まないこと。お金やモノだけではなく、時間、労力、人の気持ちなども、ぞんざいに扱わないことです。そうすることで富を得る、とあります。
・ブラフマチャリア(禁欲) 性欲含むその他欲求についても節度を保つこと。
そうすることで、大事なエネルギーを体内にとどめておくことができます。
・アパリグラハ(不貪) 所有欲を克服し、ものに執着しないこと。 囚われると、心ここにあらず、心の安定は得られません。
第二段階 ニヤマ(日常生活を送る上で、進んで行うべきこと。勧戒)
・シャウチャ(清浄) 清浄を保つこと。不潔でいると、心がそこに囚われてしまいます。
・サントーシャ(知足) 足るを知ること。あるがままであること。無いものに目を向けるのでなく、ここにある幸せに感謝していきましょう。
・タパス(苦行) 苦しみを受け入れること。ときに自身を成長のため、多少の苦痛が必要な時もあります。
・スワディヤーヤ(聖典の学習) 経典の学習。謙虚に学びづけることが大切です。
・イーシュヴァラ・プラニダーナ(神への献身) 自在神へ身を捧げること。周りの世界すべてを神様と信じ、大切に扱うことが大事です。起こることは全て意味のある、神様からのメッセージかもしれません。
ヨガ哲学は何の為?
ヨガの定義は、心を安らぎに満ちた、波たちのない状態にすることです。
いいこともそうでないこともある、人生という荒波を穏やかに乗りこなす為に、インドの昔の賢者たちはヨガという手段を残してくれたのです。
ヤマ・ニヤマの次の第三段階に、やっと「アーサナ(ポーズ)」というステップが出てきます。日常生活が整った上で、アーサナの練習をすることで、より穏やかな心を育むことができます。例えば、ゴミが散らかった部屋でアーサナの練習をしても、なんだか落ち着きませんよね!そういうことなのです。
私の主宰するヨガ教室では、レッスン冒頭でヨガ哲学についてお話させていただいています。
横浜の曹洞宗寺院で穏やかな心を育むヨガ教室、開催しています。少しでもご興味あればお気軽に、ご参加くださいね。
https://nilayogayokohama.jimdo.com/
次回は第三段階の「アーサナ(ポーズ)」、そして第四段階「プラーナーヤーマ(呼吸法)」について説明していきます。
参考:インテグラル・ヨーガ (パタンジャリのヨーガ・スートラ)
スワミ・サッチダーナンダ (著), 伊藤 久子 (翻訳)